化粧品業界は不況に強いと言われることがあります。
特に高級ブランドにおいてこのような傾向が見られるというデータもあります。
今回はその理由を消費者心理と進化心理学で説明したいと思います。
リップスティック効果(口紅効果)とは
高級化粧品を扱うエスティローダーの会長だったレナード・ローダーがITバブル崩壊後に「不況時でもちょっとした贅沢品である口紅は売れる」と言ったことがあるそうです。
そして実際にデータを取ったら売上が伸びていたのだとか。
これは2008年のリーマンショックのときも同様でエスティローダーの化粧品部門の売上は5%以上の伸びを示しました。
このような効果のことをリップスティック効果(口紅効果)と呼びます。
そして経済指標としての口紅の売上データのことをリップスティック指数といいます。
なぜ不況のとき高級な口紅が売れるのか?
なぜ不況のときに高級な口紅の売上が伸びるのでしょうか?
一つの理由としては他の化粧品と比べて口紅はそこまで高額ではないためと考えられます。
不況時には多くの消費者が化粧品のようなコストを切り詰めやすいものから安い代替品にしていきます。
しかし、そんなときでも「せめて口紅くらいは贅沢をしよう」という心理が働くので高級な口紅が売れるということです。
危機に直面すると子孫を残そうと思う
進化心理学の世界では別の理由が考えられています。
それは動物のメスとしての本能に基づくという説です。
人間に限らず動物は危険に直面すると「死ぬかもしれないがせめて子孫を残そう」という気持ちが強くなるとされています。
風邪を引いたり熱が出ているときに性欲が高まるのはこのためだという人もいます。
戦時中には出生率が上がるとも言われています。
つまりこの説によれば以下のような現象が起こることになります。
- 不景気という危機により子孫を残したいと考える女性が増える
- そして優秀なパートナーを惹きつける必要がでてくる
- そのために外見的魅力を高めなければと思う
- より良い口紅を買う
簡単にいうと不況のときほど女性は「優秀な男性を捕まえなければならない」という欲求が高まり、そのためには外見を綺麗にする必要があるため、化粧品の売上は落ちるどころか上がることさえあるということです。
特に高級化粧品とされるブランドほどこの効果が出やすいとされています。
「赤」はオスを惹きつける色
化粧品の中でも特に口紅が注目されるのにはもう一つの理由があります。
それは「色」です。
たいていの口紅は赤系です。この赤という色は動物のメスがオスを誘引するのに重要な色とされています。
猿やチンパンジーのメスは発情期になると尻が赤くなり「妊娠できますよ」というサインを発します。
人間の女性はそういった身体的なサインは発しません。
特殊なカメラで撮影すれば、肌の色がほんのり変化する様子が分かるとも言われていますが、肉眼では分からないのです。
そこで唇に赤色を塗ることでアピールしているのではないかという仮説があります。
性的に興奮した女性が赤を身につけたがるという研究もあります。(これについては否定する実験結果もありますが)
また、外国のバーで複数の女性にそれぞれ別の色の口紅を塗り、1人ずつ待機させる実験を行ったところ、赤を塗っている女性が最もナンパされたという実験結果もあります。
女性にとっても男性にとっても口紅は性的に重要な意味を持つアイテムのようです。