経営戦略を策定する前の重要なプロセス。経営不振に陥る会社はここで間違える

事業の目的を達成するためにどう戦っていくのかという「経営戦略」を策定することは、経営者の最も大切な仕事の一つです。

中小企業の経営者の中には「そんなもの要らん」という感覚型の方もいらっしゃいますが…

経営戦略によって会社の向かうべき未来を示すと、社員の働きぶりも変化しますから、策定して共有するメリットは大きいといえます。

経営戦略の策定プロセスは様々なのですが、一番最初の最も重要なステップは自社の実力を正確に見極めるということです。

「自社のことは自分が一番よく分かってる」という思い込みによって、このステップを軽視してしまう経営者が多いのですが、そのせいで経営不振に陥ることもあるので気をつけねばなりません。

経営不振に陥る原因として最も多いのが経営戦略の策定ミス

なぜ経営戦略を適切に策定しなければならないのかというと会社が潰れてしまうからです。

ハルト・インターナショナル・ビジネススクールのフェリックス・バーバーたちが経営不振に陥った企業を分析しています。

それによると経営不振に陥る原因として最も多かったのが、間違えた経営戦略を策定していることでした。

環境の変化が激しい現代では、多くの企業が市場の低成長、ビジネスモデルの寿命、熾烈な破壊的競争に直面し成長が止まります。

その状況を打開するために経営戦略を策定しますが、このとき経営不振に陥る企業は不必要にリスクの高い投資や多角化、買収といった戦略を取ろうとします。

しかし、それらの戦略が奏功することはなく売上高と利益は落ちます。上場企業の場合は株価も低迷します。

つまり、経営不振や倒産は経営戦略の策定の時点で決まっているということです。

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経営戦略を間違える原因は認識のズレ

なぜこのような誤った経営戦略を策定してしまうのでしょうか?

一言でいえば経営者の判断ミスですが、それを引き起こす要因として経営者の認識と企業の能力のズレが挙げられます。

分かりやすくいうなら、自社の実力以上の経営戦略を策定してしまっているということです。

このような事態が生じるのはある意味で自然なことです。

各部門のマネージャーは高い評価を得たいという動機を持っていますから、自部門の成功は大袈裟に、失敗は控えめに報告します。

これが繰り返されるうちに、経営者は自社の実力を実際以上に評価してしまうのです。

また複数の役員で議論しながら経営戦略を策定すると、責任が分散された気分になるため、高いリスクを取りがちになる「リスキーシフト」という現象が起こることもあります。

さらには「時代についていけてない会社と思われたくない」という虚栄心が、自社の実力に対してハイペース過ぎる成長戦略を描くことにつながることもあります。

こうして野心的すぎる経営戦略を策定し、それに則って経営することで企業が成長しないどころか、不振に陥るということです。

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効果的な経営戦略を策定するために必要なこと

効果的な経営戦略を策定し企業のつまずきを予防するためには何ができるでしょうか?

まずは経営陣が自社の能力を正しく見極めることです。

トップが企業の能力を正しく認識できていない場合には周囲がそれを補正しなければなりません。

能力が足りない場合には経営陣の交代も必要です。難しい場合にはその能力を持った人間を役員にスカウトすることで補うことができます。

そしてもう一つ大切なことは意思決定バイアスに対処することです。

先ほどのフェリックス・バーバーらの分析では戦略の決定において「成長へのバイアス」と「コンプライアンスや財務リスクを軽視するバイアス」が存在することが分かりました。

これらのバイアスがあるとリスクを軽視した経営戦略を採用する可能性が高くなります。

バイアスの影響を減らすためには「今まで上手くいった事例は正しい経営戦略のおかげだったのか、単に運が良かっただけなのか」を分析する必要があります。

他にも投資を実行する前の検証やアウトソーシング先の監視まで徹底することなどがありますが、まずは自社の能力を客観的に把握することが肝要です。

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オペレーションの失敗も経営不振をもたらす

余談ですが企業が傾く要因として、経営戦略の失敗以外ではオペレーションの失敗が挙げられます。

具体的にはコンプライアンス体制の基盤が脆弱であったり、財務リスクの管理が出来ていないことなどです。

コンプライアンス体制の問題により業績が悪化する例としては金融機関の監督不行き届きにより、トレーダーが違法な取引や規定以上のリスクを取り損失をもたらすことなどがあります。

またイノベーションやリポジショニングの失敗も経営不振の原因となりやすいことが分かりました。

このような失敗も経営者がしっかりと自社を観察することで防げる問題です。

まずは自社を客観的に見ることが肝要です。

参考文献:Felix Barber, Jo Whitehead, Julia Bistrova. 2019. Why Giants Stumble.