ジャムの法則!顧客は選択肢が多いと選べないから「おすすめ」と書いてやれ

ずっと同じ仕事をしているからこそ、消費者との感覚がズレてしまうことがあります。

私の場合は「おすすめ」という言葉に対する感覚がズレています。

陳腐に感じてしまい逆に売れなくなる気がするのです。

利益率の高い商品や、早く在庫処分したい商品でしょ?

私はクライアントのウェブサイトを制作した後で、しばらく運営することもあります。

うまく運営するためには日頃からデータを取得することが必要なので、自分のサイトも複数運営しています。このサイトもある意味ではその一環といえます。

私が運営するサイトにはアフィリエイト広告を載せているものもあります。要するに紹介した商品が売れたら手数料報酬が入る仕組みです。

どのように広告を掲載すれば良いか参考にするため、他の人のサイトを見ることもあります。

そこには「おすすめ」として紹介されている商品があるのですが、どう見ても大した商品でなかったりします。

そういった商品をASP(アフィリエイトサービスプロバイダ)で確認すると、報酬が高いことが多いです。

要するにサイト運営者に入る手数料報酬が高いものをおすすめとして紹介しているのです。

インターネット上で販売されるモノやサービスを見ているとこんなものばかりです。

そのため店舗やネットショップで「おすすめ」と書かれているのを見ると、利益率の高い商品や、早く在庫処分したい商品なのだろうと思ってしまいます。

そして「他の消費者も同じように考えるているはず」と思い込んでしまうのです。

なので自分が販売する側に回ったとき、本当に良い商品であっても「おすすめ」という言葉を使うのに抵抗があるのです。

とはいえ、やはり「おすすめ」と書いたほうが売れます。

ジャムの法則

なぜおすすめと書くと売れるのでしょうか?

一つは本当に素晴らしい商品だと素直に受け取ってもらえるからです。

そしてもう一つ、こちらが重要なのですが、人間の脳が持つ「決定回避の法則」が挙げられます。

これは選択肢が多すぎると脳に負担が掛かるので、決定すること自体を避けてしまうという法則です。

コロンビア大学のシーナ・アイエンガー教授という人がいます。彼女の『選択の科学』という本を読んだ人もいると思います。

彼女らの非常に有名な実験があります。(どれくらい有名かというと現時点で他の論文に5,000回以上も引用されています)

スーパーマーケットでジャムを販売する実験なのですが、ある週には24種類のジャムを店頭に並べ、別の週には6種類のジャムを並べました。

そして、どれくらい売れたか計算すると、6種類のジャムを並べた週の方が多く売れたのです。

24種類のときは顧客のうち3%が購入したのに対し、6種類のときは30%が購入したのです。10倍も差が出たのです。

なぜこのような差が出たのでしょうか?

それは24種類から選ぶより、6種類から選ぶほうが脳の処理が楽だからです。「決定回避の法則」が働いたのです。

つまり、「おすすめ」と書くということは、客の代わりに決めてあげるということです。

それにより負担を減らせるので購買につながりやすくなります。

ちなみにこの実験から「決定回避の法則」を「ジャムの法則」と呼ぶこともあります。

☑︎サービス名の決め方。脳に負担の掛からない名前にする(ネーミングと心理学)

選択肢が多いほうが注目度は増す

とはいえ、このジャムの法則はその後の実験で反対の結果になっているものもあります。また選択肢の多寡は購買行動に関係しないという分析もあります。

嗜好品などの場合は選ぶこと自体も楽しいという人もいるので、選択肢を絞り過ぎると「品揃えが悪い」と思われ他に行かれる可能性もあります。

また注目を集めるという意味では種類が豊富なほうが有利です。

さきほどの実験でも、通りかかった客が足を止める確率は24種類のジャムを並べた時の方が高いことも分かっています。

つまり最も有効な販売方法は、品揃えを多くし、その中に「おすすめ」と書いた商品を混ぜるということです。

また、単に「おすすめ」と書くのではなく、対象を限定するとより効果的です。

「女性におすすめ」より「生活が不規則な20代の女性におすすめ」のほうが、より自分ごととして受け取ってもらえます。そして効果への期待も高まるのです。

余談ですが「松・竹・梅」とランクによって選択肢を用意すると、真ん中の「竹」が最も選ばれやすくなります。

これは人間が極端な選択を回避する性質を持っているからです。

販売したい商品があるなら、その一つ下と上のランクの商品を用意するのも手です。

参考文献:Sheena S. Iyengar, Mark R. Lepper. (2000). When Choice is Demotivating: Can One Desire Too Much of a Good Thing?