実店舗でもネットでも男性をターゲットとするマーケティングでは恋愛を意識させると良いかもしれません。
例えば、アクセサリーや服を売るのであれば、その性能やデザイン性だけではなく、「これを着用してデートに行ったら女性からの印象も良くなります」といったメッセージを伝えるということです。
男性向けのモノを売るウェブサイトであれば、カップルのイメージ写真を掲載するだけでも効果が期待できます。
経験で知っている人もいると思いますが、消費者の行動はそのときの感情の影響を受けるものです。
これは商品やサービスを吟味する際に、そのスペックなど数値化できる指標を基準にしがちな男性消費者であっても同様です。
通常と異なる心理状態になると普段であれば行かないような店に行ったり、買わないような商品を買ったりすることもあります。
ストレスで爆買いしてしまうというのもその一例です。
実は恋愛感情もこのような影響を与えることが研究で分かっています。
恋愛グループと建物グループ
アリゾナ州立大学が159名を対象に恋愛と消費行動・奉仕活動について行った実験があります。
まず、実験参加者は2つのグループに分けられました。
1つのグループは魅力的な異性の写真を3枚見せられ、その中から最も気に入った相手を選び、その相手とのデートプランを考えるように指示されました。(恋愛グループ)
もう片方のグループは建物の写真を見せられ、それを見て回るのに最適な天候について考えるよう指示されました。(建物グループ)
男性は恋愛するとお金をつかう
その後で参加者は以下の2つのアンケートに回答しました。
- 車や時計、食事、旅行にどれくらいお金をつかいたいか?
- ホームレス・シェルターでの手伝いや貧しい家の建築の手伝いなどのボランティアにどれくらいの時間をつかいたいか?
回答を分析したところ、恋愛グループの男性は建物グループの男性と比べて、より多くのお金をつかうことが分かりました。
女性は恋愛するとボランティアをする
女性の場合はどちらのグループもお金の使い方に有意な差は見られませんでした。
しかし、ボランティアへの意欲には差がありました。
恋愛グループの女性の方がより多くの時間をボランティアに費やしたいと回答したのです。
男性の場合はどちらのグループもボランティアへの意欲に差はありませんでした。
男女ともに異性へのアピールのために行動する
なぜ恋愛感情によって男性はお金をつかうようになり、女性はボランティアをするようになるのでしょうか?
それは男女の交配戦略が関係しています。女性は男性に経済力を求め、男性は女性に美しさや献身を求めるということをお互いが知っています。
なのでそれをアピールしようとしたということです。
モノを売るにはストーリーを売る
男性に限らず、何かを売るときはそれを買うとどんな体験ができるか訴えることはとても大切なことです。
これがとてつもなく上手かったのが株式会社ジャパネットたかたの髙田明前社長です。
テレビショッピングでカメラを売るときでも、その性能については軽く触れるだけなのです。
それよりも、「このカメラでお孫さんの運動会を撮影したら良い写真が撮れますよ~」と楽しそうにその先のストーリーを語り掛けるのです。
それを聞いた視聴者は、頭の中で自分がそのカメラを持って孫の運動会に行く姿を想像してしまいます。
こうなってしまえば、もう買うのが当然という気持ちになります。
モノではなくストーリーを印象づけることが大切なのです。
女性がお金をつかうとき
ちなみに女性が恋愛の場面でお金をつかうようになることもあります。
それは自分のパートナーをライバルに奪われるかもしれないという危機を感じたときです。
このようなときは化粧品や洋服など自分の外見的魅力を高めてくれるものにお金をつかうようになります。
また不景気のときも経済的な不安からより優秀な男性を誘引しようとするので、口紅などの化粧品にお金をつかうといわれています。
このような現象を「リップスティック効果」といいます。
なので「良い化粧品を使わないと彼氏を奪われるかもしれませんよ」というメッセージが良いのかもしれません。ちょっと嫌な感じですが…
参考文献:Blatant Benevolence and Conspicuous Consumption: When RomanticMotives Elicit Strategic Costly Signals.