デジタル上の顧客接点においても「人間味」が大事。ロイヤリティを高める方法とは

IT化が進展するなか、サービス業の多くはデジタル上の顧客接点の強化に取り組んでいます。

新規顧客の大半がネットを見てやってくるという店舗も珍しくはありません。

しかし、デジタル上でのコミュニケーションにおいても「人間味」が欠かせない要素であることをご存知でしょうか。

企業のウェブサイトの「人間味」がサービス業の顧客ロイヤリティや収益に影響を与えるのです。

デジタル上の顧客接点における「人間味」の影響

ケッジビジネススクールのデニス・ハーハウゼン博士らがコーポレートサイトの人間味とその影響についての調査を行っています。

この調査では実店舗とウェブサイトの双方を持つサービス業113社の顧客を対象に聞き取りを行っています。

また、実験を通してウェブサイトから感じられる人間味が、それを見た人の評価や感情にどのような影響を与えるかも確認しています。

その結果、ウェブサイトに人間味が感じられると顧客ロイヤリティが高まり、売上にも貢献することが分かりました。

人間味を感じさせるための具体的なポイントは次の通りです。

1. 従業員の顔写真の効果

まず重要な要素は直接サービスを提供する社員の顔写真がサイトに掲載されていることです。

従業員の顔が見えることで顧客はデジタルな接点であっても「人間的な接触」をした気分になれます。それによってサービス全体に対する信用度が増します。

さらに顔写真には顧客体験の記憶を再構築する効果もあります。

仮に過去に体験したサービスが大したことがなかったとしても、ウェブサイト上に親しみやすい顔が載っていると、顧客の記憶がポジティブに再構築され、高い評価に変わります。

この効果は企業が顧客志向の文化を持っているときほど強くなることも分かっています。

2. コンタクトのしやすさがもたらす安心感

もう一つのポイントは分かりやすいお問合せ先情報です。つまりメールアドレスや電話番号が明示されていることです。

これによって顧客は対面で応対されているときと同じような安心感や信頼感を得ることができます。

特に顧客との関係構築が重要な業界や、支払金額が大きくなる業界において、コンタクトのしやすさは顧客満足度の向上に寄与します。

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「人間味」が顧客ロイヤリティを高め収益基盤の構築につながる

今回の調査結果からは「人間味」によって、顧客ロイヤリティを高めることで、企業の売上にポジティブな影響を与えることが示されています。

顧客ロイヤリティの向上は、リピート購入や口コミ、紹介などにつながり、持続的な収益基盤を構築してくれるからです。

また、デジタルチャネルでの「人間的な接触」は、従業員が直接関わらない場合でも、顧客が感じるサービスの質や満足度を高めるため、結果的に売上増加に寄与する可能性があります。

特に、競争が激化している業界やサービスの差別化が難しい業界においては、デジタル上の顧客接点においても「人間味」を感じてもらうことが重要です。

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デジタル上の顧客接点の「人間味」を高める方法

ここまで説明した通り、デジタル上の顧客接点の「人間味」を高めるには、従業員の顔が見えることと、コンタクトしやすいと感じてもらうことが大切です。

まずは無味乾燥なコーポレートサイトになっていないか見直してみましょう。

また、ユーザビリティの高い設計にすることも重要です。お問合せページがどこにあるのか分かりにくいデザインでは顧客がストレスを感じてすぐに離脱してしまいます。

さらに見難い設計のウェブサイトは1ユーザーあたりの閲覧時間と閲覧ページ数も少なくなります。これはサイトの検索順位にも影響する指標ですから注意する必要があります。

今回の調査からは顧客志向の文化が強い企業ほど、デジタル上の顧客接点におけるロイヤリティが大きくなることが示されています。

ですから従業員教育や社内文化の構築を通じて、顧客の利益を最優先にする姿勢を全社的に確立することも重要となります。

※今回の調査ではサービス業で直接的にサービスを提供する従業員の顔写真でのみ、人間味を感じさせる効果があるという結果となっています。しかし、人間は「知っている人から買いたい」という欲求を持っていますから、他の業界においても自社サイトで従業員のプレゼンスを高めたり、社長ブログなどで広報していくことは顧客ロイヤリティ向上や売上増につながるといえます。

参考文献:Herhausen, D., Emrich, O., Grewal, D., Kipfelsberger, P., & Schoegel, M. (2020). Face Forward: How Employees’ Digital Presence on Service Websites Affects Customer Perceptions of Website and Employee Service Quality.