エステやダイエット系のビジネスでは広告やウェブサイトでその効果をアピールするために、写真を載せることも多いです。
特に使用前と使用後でこんなに変化がありました、というビフォーアフター画像がよく使われます。
しかし、それを掲載したからといって潜在顧客はそのまま信用してくれません。
「そんな簡単に変わるの?」と疑うのです。
その疑いを晴らし信ぴょう性を高めるにはどうすれば良いのでしょうか?
ビフォーアフター画像だけの広告は疑われやすい
まず知っておいてほしいのは、昨今の消費者は企業側の出す広告に対して、疑い深くなっているということです。
ネット広告にはどう見てもインチキだろうという画像が多いです。薬機法を完全に無視した広告も多いです。
肌に塗る薬用クリームの広告のビフォー画像には、ゼラチンを固めて作ったようなダミーのシミやイボが使われたりしています。
またAI技術の発展により、いくらでも本物っぽい画像が生成できますし、そのことを消費者も知っています。
さらに直接は関係ありませんが、前澤友作さんや堀江貴文さんら有名人の顔写真を勝手に使った広告なども問題になっています。
こういった詐欺広告のせいで消費者は懐疑的になっているのです。
このような現状の中、誠実な商品やサービスを提供している企業が信じてもらうにはどうすれば良いのでしょうか?
それはビフォーアフター画像の間に途中経過の画像を挟み込むことです。
これによって信用度が増して購入意欲が高まるのです。
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途中経過の画像が商品への欲求を高める
ビフォーアフター画像の間に途中経過の画像を追加することで、どのような効果が得られるのか、バージニア大学ダーデンビジネススクールのルカ・シアン博士らが実験を行っています。
この実験では歯のホワイトニング商品の広告を2種類用意しました。
片方はビフォーアフターのみ2枚の画像を載せた広告、もう片方はビフォーとアフターの間に3枚の途中経過画像も載せた広告です。
121人の大学生にこの広告のうちのどちらかを見せました。その後で、この商品のサンプルと現金1ドルのどちらが欲しいかを尋ねました。
すると、ビフォー・アフター画像のみの広告を見た人たちのうち52.5%がサンプルを選んだのに対し、途中経過画像も含む広告を見た人たちは77.4%がサンプルを選んだのです。
つまり、途中経過を表示したことで、その商品に対する評価が高まり、お金よりも商品を選ぶ確率が高まったということです。
さらに他の実験では、消費者が疑い深くなっているときほど、途中経過の画像を見せることで、信頼度が高まりやすくなることも判明しています。
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なぜ途中経過の画像が評価と信頼度を高めるのか?
なぜビフォーアフター画像だけよりも、途中経過の画像も載せたほうが評価と信頼度が高くなるのでしょうか?
そこには次のような心理的な理由があります。
1. 変化が現実的であると感じる
一般的なビフォーアフター画像のみの広告では「劇的な変化」が強調される一方、その変化がどのように達成されたかについての説明は不足しがちです。そのため、消費者は「こんな劇的な効果が本当に出るのか?」と疑念を抱きやすいです。
しかし、途中経過も見せる広告では、結果に至るプロセスが段階的に示され、変化が少しずつ進む様子が描かれるため、消費者にとって現実的で達成可能な変化に見えます。このように、変化が現実的だと感じられることで、製品の効果がより信頼できると感じられるのです。
2. 具体的なプロセスがイメージしやすい
途中経過の画像があると、消費者は変化の過程をイメージしやすくなります。たとえば、減量プログラムの広告において「最初は少しだけ体重が減り、次第に脂肪が落ちていく」という段階が示されることで、自分が同じ変化を経験する様子を具体的に想像しやすくなるのです。
このように自分自身の未来の姿をリアルに想像できると、その製品を使うことで本当に効果が得られるという実感が高まるとされています。実際に目に見えるようなプロセスが描写されることで、製品の効果を「目撃」したような感覚を得るからです。
3. プロセスが見えることで「嘘ではない」と感じる
広告が効果の過程を細かく示すことで、消費者に「この製品は効果を誇張していない」「企業が正直にその効果を伝えようとしている」と感じさせる効果があります。
一般的に、広告における劇的なビフォーアフターの変化は過剰な期待を抱かせますが、それが実際に達成可能かどうかは疑わしいと思われがちです。しかし、変化が徐々に進む様子が描かれていると、効果の過程が「リアルに見える」ため、製品の誇張や虚偽の主張が少ないと感じられ、広告全体に対する信頼性が増すのです。
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即効性を求められる商品はビフォーアフター画像のみの広告が良い
このようにビフォーアフター画像の間に途中経過の画像も入れることで購買意欲と信頼を高める効果が期待できます。
ただし、注意すべきことがあります。
それは即効性を求められる商品ではこのような効果が得られないどころか逆効果となるということです。
例えば鼻づまりを解消するスプレーのような商品の広告に、途中経過の画像を入れてしまうと、速く効果を得たい消費者には時間が掛かるというイメージを持たれて、評価が下がることが実験で分かっています。
こういった商品の場合はビフォーアフター画像のみの広告のほうが有効となります。
☑SNSにおける「売上アップのための投稿」と「エンゲージメント向上のための投稿」の違い
参考文献:Luca Cian, Chiara Longoni, and Aradhna Krishna. (2020). Advertising a Desired Change: When Process Simulation Fosters (vs. Hinders) Credibility and Persuasion.