アパレルブランドは店頭に立たせる店員に魅力的な人間を採用し、自社の服を着させていることが多いです。
これには着用したときのイメージを分かりやすくしたり、「私も良いモノだと思っているんですよ」という建前になるという効果があります。
客から「店員さんが着ている服はどこにあるのですか?」と聞かれたときにそれが他社ブランドのものだと説得力もなくなってしまいます。
自社の売り上げに貢献させるという目的もあるでしょう。社員割引で購入できるので販売員側にもメリットはあるかもしれませんが…。
自腹営業になってしまってキツいという店舗マネージャーもいるかもしれません…
総合的に見ると魅力的な店員に自社ブランドの服を着せて接客させるのは良いマーケティングです。
しかし、この戦略が逆効果となるケースもあります。
美人店員の「私も同じの着てるんですよ」は逆効果
ブリティッシュコロンビア大学のダレン・W・ダールらが、洋服を買うときの消費者行動についての調査を行っています。
それによると、自分のスタイルに自信のない人間にとっては、魅力的な人間がブランドの服を着ていることは必ずしもプラスにはならないという結果となりました。
自分のスタイルに自信のない人間がドレスを買おうとするとき、以下の3つのシチュエーションによって心理が変わることが分かったのです。
- 魅力的な人が着用しているのを見たとき⇒「素敵なドレス」だと思う
- 自分だけが試着して他の人は着用していないとき⇒「素敵なドレス」だと思う
- 自分も魅力的な人も同時に着用しているとき⇒「素敵なドレスだけど他の人が着たときと比べて自分の姿は酷い」と思う
つまり、ただ試着するだけなら問題ありませんが、そのときに魅力的な人間が同じものを着用しているのが視界に入ると気持ちが変わってしまうということです。
たとえば、美人でスタイルの良い店員が「私もいま同じ服を着てるんですよ~」などと見せつけてしまうと、自分に自信を持っていない客は「私が着てもこの店員さんのように素敵にはならない」と考えて購買意欲が失せてしまうのです。
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「あの服を着ればステキになれる」と一度は思う
洋服に限らずファッションというのは楽しむだけではなく、外見の魅力を高めるという目的もあります。
なのでそれを身につけることによって自分の魅力が高まると思わせなければなりません。
そのために美しいモデルや芸能人にお金を払って自社ブランドを身につけてもらうのは悪いことではありません。
それを見た消費者に「私もあの服を着ればステキになれる」と思わせることができるでしょう。
自分に自信のない消費者であっても、雑誌やテレビで洋服を眺めているときは「自分も着たいな」と思っているのです。だから店まで足を運ぶのです。
しかし、実際に店頭で試着したときに、自分よりも魅力が高い相手が比較対象となってしまうと買う気がなくなってしまうのです。
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アパレル業界はチャンスがたくさん残っている
今回紹介した調査内容はほんの一例に過ぎません。他にもペルソナを考慮しないがために販売機会を逃しているケースはあります。
当社の服は自分に自信を持っている魅力的な人にしか着て欲しくないというのであれば問題ありませんが、少しでも多くの顧客に販売したいと思っているのなら、最終的に設定したペルソナをさらに性格で分類し取りこぼしがないか確認したほうが良いでしょう。
自分に自信が持てない客の中には「店員さんに心の中でバカにされているのではないか」という心配をしている人もいるのです。そういった人たちが気軽に買物できるような環境をつくることも肝要です。
デパートやファッションビルのアパレルブランドを視察していると、全ての客に対してわざわざ購買意欲が失せるような売り方をしている店が非常に多いことが分かります。つまりチャンスはたくさんあるということです。
余談ですが性格を意味するpersonalityの語源はpersonaです。
☑店内ポップには「特売情報」より「レシピ」を書いた方が売上が増える
参考文献:Darren W. Dahl, Jennifer J. Argo, and Andrea C. Morales.(2011). Social Information in the Retail Environment: The Importance of Consumption Alignment, Referent Identity, and Self-Esteem.