私の子供時代、テレビCMで「買わなきゃハドソン」というキャッチフレーズがよく流れていました。
ゲーム開発を手掛ける株式会社ハドソンのものです。
このキャッチフレーズが「買わないと損」という意味なのか、単に良いものだから「買わなくちゃ(ハドソンの製品を!)」という意味なのかは不明ですが…
「買わないと損しますよ」という商品販売の方法は効果的です。
なぜなら人間は「得した満足」よりも「損したショック」の方が大きいからです。
メリットをアピールしても商品は売れない
商品を販売するとき性能や品質といったメリットを主張しがちです。
「このゲームはグラフィックが綺麗でストーリーも面白いんです」といかにそれが素晴らしいものかアピールしてしまいます。
特に開発に苦労した場合などはウェブサイトでも熱い説明文を掲載します。
対面での接客でも自分が本当に良いと思っているとそれをそのまま伝えたくなります。
確かにこういったアピールも大切です。
しかし、商品の素晴らしさだけをアピールしても顧客には響きません。
販売する側からすると他とは違う唯一無二のオリジナル商品と思っていても、客側からしたら違いは分かりにくいからです。
それに市場で販売されるものは良いモノであるのが当たり前という無意識も持っています。
そのような状況で買ってもらうには、買わないと損すると伝え、実際にそう思わせる必要があります。
行動経済学の「損失回避性」
なぜ「買わないと損」と伝えることが効果的といえるのでしょうか?
それは人間が損を嫌うからです。脳は得した喜びよりも損したショックを大きく認識するのです。
1万円を貰った喜びを100とすると、1万円を失ったショックは-150にも-200にもなります。だから損することを避けたがるのです。
このような性質を行動経済学では「損失回避性」と呼びます。
損失回避性があるため、「買うと得」と言われても心は動きませんが、「買わないと損」と言われると焦りや不安が生じるのです。
もちろん「買わないと損」と伝えるだけではダメです。顧客の心に焦燥感を芽生えさせる必要があります。
科学的根拠に乏しい幼児教育が大繁盛な理由
損失回避性をうまく活用している業界の一つが教育産業です。特に幼児教育でこのテクニックが頻繁に使われています。
例えば「5歳までに〇〇をしないと数的思考が伸びない」「中学生になってからでは〇〇能力は発達しない」という説明を見たことはないでしょうか?
これを見た保護者は、今やらないと手遅れになってしまうと焦り、申込をしてしまうのです。
これが「小さい頃から〇〇をやっておくと数的思考が伸びます」では、「今じゃなくても良いか」となり申込につながりません。
科学的根拠に乏しい〇〇法のような教育法が大繁盛しているのも、それをしないことによる損をアピールして焦りや恐怖感を芽生えさせているからです。
余談ですが「買わなきゃハドソン」のフレーズが効果てきめんだったのか、ハドソンは会社ごとコナミに買われています。