SNSにおける「売上アップのための投稿」と「エンゲージメント向上のための投稿」の違い

今の時代はInstagramやX(旧Twitter)などのSNSを集客のために利用している企業も多いです。アカウントを持っていない企業のほうが珍しいくらいかもしれません。

一口にSNSによる集客といっても、その内容は様々です。

売上アップを指すこともあれば、ブランドのファンの増加を指すこともあります。

ウェブマーケティング担当者の多くは後者の目的でSNSを運用していることが多いかもしれません。

というよりも、企業のSNSというのは顧客との関係性構築やブランド認知のために運用するものと考え、直接的な売上アップの効果をそれほど期待していないかもしれません。

しかし、SNSによる売上アップの効果は意外とあります。1投稿あたりの効果でいえば、エンゲージメント向上への影響よりも、売上アップへの影響のほうが大きいくらいです。

もちろん、どのような内容を投稿するかによってもその効果は違います。

結論からいうと、「情報提供型のコンテンツ」を投稿すると売上がアップし、「感情的なコンテンツ」を投稿するとエンゲージメントが増加します。

「情報提供型のコンテンツ」 vs. 「感情的なコンテンツ」

企業のSNSの影響について調べたアムステルダム自由大学のジョージア・リアデリらの研究があります。

過去に発表されたSNSの効果についての論文86本(データ数は9,000万件以上)を統合・分析したものです。

この研究によると、商品やサービスの具体的な説明や専門知識のような「情報提供型のコンテンツ」を投稿すると売上アップにつながることが分かりました。

一方で、面白いネタやブランドの価値観を伝えるストーリーのような「感情的なコンテンツ」を投稿すると、「いいね」などのエンゲージメントが高まることが分かりました。

(エンゲージメントの高まりはその企業やブランドに対する愛着の強化につながります)

また1投稿あたりの影響の大きさは情報提供型のコンテンツのほうが大きいことも判明しています。

なぜ投稿内容による違いが生じるのか?

なぜ投稿内容によってこのような違いが生じるのでしょうか?

まず、情報提供型のコンテンツがなぜ売上アップにつながるかというと、それが製品やサービスを購入する直接的な決め手となる情報だからです。

情報提供型コンテンツでは、製品やサービスの具体的な特徴や利点、価格、使用方法などを詳細に伝えます。

このような具体的かつ合理的な情報は、購買を検討している消費者の判断に大きな影響を与えますから、販売を促進する効果が高いのです。

しかし、こうした合理的な情報に感情が動かされることは少ないですから、他者とシェアしたいという欲求は生まれにくく、エンゲージメントは高まりにくいといえます。

一方、感情的コンテンツは感動的なストーリーやユーモラスな動画によって、消費者の感情に直接働きかけます。

感情を動かされた消費者はその感動を他人と共有したいという欲求が強化されます。

それによって、「いいね」「シェア」「コメント」などのエンゲージメント行動を起こしやすくなるのです。

ただし、こうした感情的コンテンツは具体的な製品の購入につながる「機能的な情報」や「購入を動機づける要素」が不足しているため売上アップにつながりにくいのです。

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売上アップかファン獲得かで投稿を分ける

これらのコンテンツの違いを理解することで、企業は目的に応じた効果的なSNS戦略を立案することができます。

売上アップを目指したいのであれば、製品仕様、使用方法といった合理的で実用的な情報を投稿しましょう。

ブランドのファンを増やしたり、顧客ロイヤリティを高めたいのであれば、感動的なストーリーやユーモアのある投稿で喜びや驚きを与えましょう。

ちなみに今回の研究ではX(旧Twitter)よりもFacebookやInstagramのほうが、エンゲージメントを高める効果が高いことも分かっています。

一方でXのほうが拡散性に優れていることも分かっています。

とはいえ、個人的な感覚としては、扱う製品や客層によっても、プラットフォームごとの反応は異なりますから、色々と試す必要はあると思います。

フォロワー数の少ない中小企業でも意味はあるのか?

中小企業の経営者の中には、フォロワー数が少ないのでSNSでの集客は効果がないと思っている人もいます。

しかし、今回の研究では、フォロワー数が少ない場合の方が、投稿の販売効果が相対的に高いことが分かっています。

小規模なコミュニティではフォロワーとのつながりが強く、メッセージの効果が大きくなることが原因と考えられます。

これに関しては「広告効果とフォロワー数。なぜナノインフルエンサーのほうが収益が高いのか?」の記事が参考になると思います。

大切なことはフォロワー数ではなく、フォロワーの質なのです。自社の提供する商品やサービスを利用しているフォロワーの割合が高ければ、少ないフォロワー数でもSNSの集客効果を得ることは可能です。

また、新製品に関する投稿の場合、販売促進効果が特に高いことも分かっています。

消費者が製品についての情報をまだ持っていないため影響を与えやすいからです。

ですから新製品やサービスを投入した際には積極的にSNSで発信していきましょう。

参考文献:Liadeli, G., Sotgiu, F., & Verlegh, P. W. J. (2023). A Meta-Analysis of the Effects of Brands’ Owned Social Media on Social Media Engagement and Sales.