EC事業者にとって返品は悩みの種です。
EC通販で販売した商品の返品率の平均は5~10%前後といわれていますが1%変わるだけでも利益は大きく変わります。
この返品率に影響を与える要因の一つが通販サイトの説明文の表示です。
正しいデザインにすることで返品率を下げられるのです。
なぜ消費者は返品するのか?
そもそも消費者はなぜEC通販で買ったものを返品するのでしょうか?
それは商品が思っていたものと違うからです。
アパレル商品であればサイズや品質が違ったり、工具や部品であれば本来の用途に用いることが出来ないということが起こり返品するのです。
販売する側がしっかりと商品説明を載せていたとしてもこのようなことは起こります。
なぜなら消費者がしっかりとサイトを確認しないことがあるからです。なぜ確認しないかというとサイトの設計に問題があるからです。
特にスマホ向けに表示されるデザインは注意しなければなりません。
スマホ向けのレズポンシブルウェブデザイン
パソコンとスマホでは同じURLにアクセスしても表示されるデザインが変わります。
これはレスポンシブルウェブデザインといって閲覧者の機器によってレイアウトやフォントを変化させる仕組みが備わっているからです。
パソコンのデザインをそのままスマホに表示させてしまうと文字が小さくなって読みにくくなってしまうためこのような仕組みがあるのです。
近年のサイトはほとんどがこの形になっています。Amazonも楽天もです。
かなり昔に作られて改修していないウェブサイトでもない限りはスマホでもパソコンと同じ表示になるということはないでしょう。
またグーグルなどで検索した際の表示順にも影響を与えるため、ほとんどのウェブサイトはレスポンシブルウェブデザインとなっています。
レイアウトだけではなく情報量も変化している
レスポンシブルウェブデザインになっているECサイトはパソコンとスマホで異なるデザインを見せているだけではありません。
情報量も変化していることがあるのです。
たとえばパソコン画面ではサイト内の検索結果画面に詳細な商品説明も掲載していても、スマホ画面では3行ほどに省略されていたりするのです。
全ての説明を読むためには「詳細ボタン」をもう一度クリックしなければなりません。
この違いが人間の感じ方や選択に影響を与えている可能性があるのです。
そしてそれが商品到着後の返品につながっているのです。
ECサイトの実験
ECサイトでサービスを選択したり商品を買うときにパソコンを使うかスマホを使うかで消費者の行動と心理に変化が生じる可能性を調べた実験があります。
イスラエルのネゲヴ・ベン=グリオン大学のリオル・フィンク教授と同大学院の学生ダニエル・パピスメドヴが架空のホテルサイトを使って行ったものです。
この実験ではECサイト内の検索結果における重要な項目の表示数を変化させることによって選択に変化が生じるかを調べました。
重要な項目というのは宿泊料金や市街地からの距離等です。
パソコン画面には重要な項目を8個、スマホ画面には3個表示されるようにサイトをデザインしました。
どちらもクリックすることで全ての情報を閲覧することが可能です。
スマホから選ぶと好みから外れる
この実験の結果、パソコン画面を提示された人たちよりもスマホ画面を提示された人たちのほうが本来の好みとは合わない選択をする傾向が高いことが分かったのです。
ただしスマホ画面を提示された人たちも最初に表示される項目が選択にとって重要な項目だった場合には正確な選択が出来ました。
つまり3つしか表示されなくとも、それがたまたま自分にとって重要な項目であれば好み通りのホテルを選ぶことができたということです。
この実験の協力者はイスラエルの大学の工学部に通う学生で平均年齢は20代の前半です。
日本にいるとあまりイメージがないかもしれませんが、イスラエルはIT先進国です。
つまりスマホの扱いに慣れていないからという要因は考慮する必要はありません。それどころかむしろIT機器に強いといえます。
たった1クリックするかしないかだけの違いですが、閲覧者にそれをさせるのは簡単なことではないのです。
返品率を下げるために
この実験からも分かる通り、必要な情報を全て提供したとしても見難いサイトデザインになっていると消費者は読んでくれないということです。
そしてそのまま注文し、実物が届いてから「思っていたものと違う」となってしまうのです。
そうすると返品する確率も高まります。
多くの事業者はECサイトに出品し説明文を載せるときにパソコンを使用していると思います。
するとスマホではどう見えるか?という視点を忘れがちになります。
ECサイトにもよりますがBtoCの商品はスマホから買う人のほうが多いので、どのようなデザインで表示されるかをきちんと確認しなければなりません。
サイトの構成上どうしても説明を省略しなければならない場合には多くの人が重要と考えるであろう情報から優先的に表示できるようにしましょう。
また自社のECサイトであれば自由にデザインを変えることができますから、見難いものになっているなら色やフォントサイズ、配置を変えるなどして、消費者が情報を見落とし難い形にしましょう。
そうすることが返品率を下げることにつながるのです。
参考文献:Daniele Papismedov,Lior Fink (2019)Do Consumers Make Less Accurate Decisions When They Use Mobiles?