食品は体内に直接取り込むものなので「毒」と思われたら当然ですが売れません。
特に昨今の健康ブームによって消費者は体に良いものを求めています。
つまり食品のマーケティングにおいては味の良さだけでなく、健康にも良いものであるというイメージを消費者に刷り込む必要があるのです。
そこで利用したいのが「オーガニック」や「低脂肪」などのフレーズです。
今さら?と思うかもしれませんが、いまだにこれらの言葉の威力は強いのです。
多くの消費者が「オーガニック」や「低脂肪」というフレーズがあるだけで、その食品が健康に良いものと勘違いする傾向を持っています。
体に悪影響を及ぼすものが入っているかもしれないのに気づかないのです。
このような現象を心理学で「健康ハロー効果」といいます。
ハロー効果とは
美人やイケメンを見ると「きっと性格も頭も良いのだろう」と想像することがあります。
偏差値の高い大学を出ている人間を見れば「人格や仕事の能力も高いのだろう」と思うこともあります。
このように一つの顕著な特徴によって他のことに対する評価まで影響を受けてしまうことを心理学で「ハロー効果(後光効果)」と呼びます。
ハロー効果は学校の教師が生徒の成績をつけるときや、上司が部下の評価をするときなど無意識に働きます。
一つでもずば抜けたものがあると、他の事柄への評価も高くしてしまうのです。
面白いところでは美人な女性を連れている男性はそれだけで優秀に見えたりもします。(残念ながらその逆はありません。イケメンを連れていても女性の評価には影響しないのです)
ビジネスマンが交渉の席に美人秘書を同席させるのは潜在意識の中でハロー効果の威力を知っているからと言われています。
要するに私たちは目立つ特徴によって他の事柄に対する認識も歪められてしまうのです。
健康ハロー効果
そしてこのハロー効果は食品を選ぶときにも起こります。
「オーガニック」「低脂肪」と書かれているとそれだけで含まれる全ての成分が健康に良いものだと思い込んでしまうのです。
これを「健康ハロー効果」と呼びます。
全く同じ食品なのに…
コーネル大学の研究者たちが、ニューヨークのショッピングモールで155人の実験参加者を集めました。
そしてヨーグルト、クッキー、ポテトチップスを2個ずつ組にして並べました。
それぞれの組には「オーガニック」「レギュラー(普通)」と書かれたラベルが貼ってあります。しかし全く同じ商品です。
参加者はそれぞれの食品の味やカロリー、いくらまでなら払うかを評価しました。
その結果、オーガニックと書かれたヨーグルトとクッキーはカロリーが低いと評価され、支払いの額も最大で23.4%多くなりました。
味についても脂肪分が少なく感じると評価されました。
クッキーについては「レギュラー」のほうが美味しく感じると評価されました。これは健康的な食べ物のほうが味が損なわれると考えられているためです。
消費者は無意識に騙される
自分は健康ハロー効果には騙されないと思っている人でも無意識に影響を受けている可能性があります。
コマーシャルで「ゼロカロリー」「特保」「お医者さんが作った」などと言われると、それだけで体に良いものと思ってしまう消費者は多いです。
どんなに健康に良さそうな商品でも体に悪いものは入っているかもしれないのです。しかし消費者は知らないうちに洗脳されてしまいます。
このような商品に騙されない消費者も存在します。
それは食品のラベルをきちんと読むタイプの消費者です。
さきほどの実験でも正しく評価できたのは定期的に栄養表示ラベルを読んだり、環境に優しい行動を習慣にしている参加者でした。
判断力のある消費者には健康ハロー効果は生じないのです。
商品のターゲットとなる客層の判断力を考慮して、健康ハロー効果をマーケティングに活かすと良いです。
何だか騙してるようではありますが…。
参考文献:Wan-chen JennyLee, et al. (2013). You taste what you see: Do organic labels bias taste perceptions?