日本のプロ経営者が無能なのはなぜか?

ありがたいことに、こんな私でもプロ経営者のような形で社長や副社長、COOをやって欲しいというオファーをもらうことがあります。その仲介ビジネスでも始められそうな勢いです。

「ショボい自分をいかに大物っぽく見せるか」を必死に研究している甲斐があるというものです。

見事に中小企業オーナーの皆さんが騙されてくれています。

ここ数年は中小企業でもプロ経営者の招聘を検討しているところが増えているように思います。

自分自身がオファーされることもあれば、誰か良い人いないかと聞かれることが増えました。

この手の相談を受けたとき私の返答は決まっていて、「プロ経営者は基本的に無能」です。

もちろん全員が無能ではありません。自分の経営するファンドの出資先の社長に就任しているようなケースでは優秀な人もいます。それをプロ経営者と呼ぶのかは不明ですが。

しかし日本のプロ経営者は有能な人材より無能な人材の方が多いです。

なぜプロ経営者は無能なのか?

なぜプロ経営者が無能かといえば、本当の経営をしたことがないからです。

プロ経営者の前職としてはコンサルティングファームや金融機関が挙げられます。これらの企業は経営のアドバイス風のことはしますが経営はしません。

また外資系企業の日本支社長だった人間がプロ経営者になることもありますが、日本支社長というのは本国の本社に行けば部長程度のポジションでしかないことが多いです。

アメリカ本社で決められた方針に従ってオペレーションを進めるだけなのでこれも経営とは呼べないでしょう。

つまりプロ経営者の多くは起業したり、潰れかけの会社を再生させた経験はおろか、安定した状態の企業においてさえ自分の裁量で全体の経営方針を決定した経験がないのです。

大企業の多くはサラリーマン社長なので平時であればプロ経営者であっても問題はないでしょう。余計なことをしなければきちんと回ります。

しかし、わざわざプロ経営者を招聘するのはこれから一気に売上を伸ばしたい企業や、変革したい企業、民事再生法が適用された企業です。

経営するのが難しい企業なのです。そんなところに経営の経験のないプロ経営者を投入したところで良い結果が出る可能性は低いでしょう。

同じ雇われ社長であっても、むしろ生え抜きの社長のほうが業界と自社に詳しい分だけ、成功確率は高いかもしれません。

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中小企業もプロ経営者は多い

実は中小企業もプロ経営者は多いです。プロ経営者というのが正しいのか分かりませんが、外部から来た人間です。

専務や経理部長のような肩書になっていますが実質的に会社を仕切っているというパターンもあります。取引先や銀行から来ているパターンです。

最近では大手企業の管理職クラスを退職した人間を中小企業の役員にマッチングするサービスもあります。

しかし、残念ながらこれらの経営者も無能であるケースが多いです。

これは当然といえば当然です。取引先に天下るということは自社で無能と判断されたからなのです。

もちろん中には取引先の再生のためにエース級を投入するということもありますが、そのような人材はすぐに本体に戻ってしまいます。

また大手を辞める優秀な人材であれば定年後も引き留められるか、中小企業では払えない額の報酬でのオファーがあるはずです。

(※ただし大手企業の優秀な人間の副業としてコンサルティングをしてもらうというのは今後は業界によっては有効な戦略となり得ると思います)

プロ経営者を雇った場合のデメリット

散々プロ経営者をこき下ろしてきましたが、実は私自身もプロ経営者のような立場で顧客先に入ることはあります。

ただし執行役員にはなっても法律上の役員にはなりません。(その理由はいつかまた書こうと思います。念のために言っておくと前科持ちで法律上取締役になれないとかではありません)

名刺に「執行役員」と入っているだけで、それ以外は私の事務所と顧客の業務委託契約です。なので書類上は経営コンサルティングと同じなのですが…。

とはいえ実質、仕切っているのでプロ経営者と同じ立場です。

新規事業や子会社の立ち上げのときに入ることが多いのですが、そこでよく驚かれることが3つあります。

スピードが早いこと、数字を作ろうとすること、実務を手掛けることの3つです。

私はせっかちなのでさっさと決めてさっさと動きますし、目先の小銭を作ろうとしますし、自分で実務も行います。

例えば、やると決めた日に集客用のウェブサイトを自分で作ってGoogle広告の出稿まですることがあります。外注すると費用が掛かりますし、何よりトロいのでイラついてしまいます。

SHARPを買収した鴻海の郭台銘(テリー・ゴウ)会長も言っている通り「スピードのある者には利益が残り、スピードのない者には在庫が残る」のです。

あなたが起業家ならこれくらいのスピードと入り込み方が当然と思っているでしょう。

しかし、何度か外部のコンサル会社やプロ経営者に任せたら、それが当然ではないことに気が付くと思います。

彼らは「売上を増やそう」「コストを減らそう」「PDCAを回そう」と言ってくれるだけだからです。

それと綺麗なパワポの資料を作ってくれるかもしれません。

つまりプロ経営者を雇った場合のデメリットは報酬に見合うリターンが得られないことと、その無能さやトロさにイラつくということです。

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あなたがプロ経営者に頼りたくなるワケ

それでもプロ経営者を雇いたいと考える人間はいます。

おそらくネットや新聞で最新の経営用語やトレンドを見たとき、それに詳しくないと時代に取り残されるのではないかという不安を持ってしまうのでしょう。

そのため、そういった経営理論に詳しそうな人間が頼もしく見えてしまうのです。

ですが、毎年のように新しく出る経営の流行語など中身のないものだらけです。昔からやってることをわざわざカタカナにしただけだったり、定義づけしただけのものに過ぎません。

それを取り入れようと取り入れまいと何も変わらないのです。

経営者は孤独なので「自分だけ知らないのでは?」と不安になりがちですが、心配するなと言いたいです。

そんな素晴らしいものならそれを考えた人間が独占するはずですから、世の中に出すわけがないのです。

有能なプロ経営者の選び方

それでもプロ経営者を雇いたいという人間に正しい選び方を説明します。

中小企業がプロ経営者を選定する際のポイントは2つです。

  • 目先の数字を作れること
  • 長期的な視点で見た場合にも健全な経営をできること

数字を作れないプロ経営者は「長期の視点で経営している」と言い訳をします。

解雇やコストカットで雑に目先の数字を作るプロ経営者は「キャッシュフローを整えることが大事」と言い訳をします。

つまりこの2つを同時にできるプロ経営者が優秀ということです。

そして最後に重要なことをお伝えしておきます。この2つを確実にできる人間は自分の会社を経営しているので、プロ経営者にはなりません。

ちなみに私もできません。

プロ経営者は「経営のプロ」ではなく「自分を凄そうに見せるプロ」でしかないということを忘れないでください。