経営者が読むべき本は専門書!ビジネス書は読む必要ナシ

いつも本を持ち歩いているせいか、経営者からおすすめの本をよく聞かれます。

どんな本を読んだら経営に役立てることができるでしょうか?ということなのですが。

私の答えはだいたい決まっていて、経営者が読むべきは専門書と法律、会計の本です。

そして読む必要がないのはビジネス書とも言っています。

経営者が専門書を読むべき理由

経営者が読むべき専門書というのは、まずは自分の会社が属する業界のものです。

製造業ならそこで使われる機械や材料、手法に関するものです。

なぜ専門書を読まなければならないかというと、専門的なことを分かっていないと経営判断を間違えるからです。

技術に関する知識がないと利益だけを基準に判断してしまいます。儲かりそうだからという理由である製品を製造するための設備投資をしたら、他社でも簡単に真似できるものだった、というパターンになりかねません。

また、業者からボッタくられることもあります。

経営者に専門知識がないせいで余計なコストを払っているケースは非常に多いです。半額どころか10分の1のコストで済むケースもかなりあります。

それと経営者が専門的なことを分かっていないと社員が誤魔化します。

ある仕事をどれくらいの期間で仕上げられそうか聞いたとき、どうせ分からないだろうと長めの期間を言って楽をしようとするのです。

また、自社で受ける能力があるのに、面倒だからと「ウチの技術では無理です」などという社員もいます。

社長が細かいことまで理解していればこのような誤魔化しはされません。

専門書に関しては自社と関係ない業界のものでも、読んでみると新たなビジネスチャンスを発見できることもあります。

☑︎経営戦略を策定する前の重要なプロセス。経営不振に陥る会社はここで間違える

経営者が法律を知らないせいで大問題になる

法律に関する本も簡単なもので良いので読んでおくべきです。

経営者が法律を知らないせいで大問題になるケースは非常に多いです。

例えば自社の納品に不備があった場合には違約金を支払うという条項は入っているのに、市場環境の変動による納入価格の変動の条項を入れていない、といった自分たちだけが不利になるような契約を結んでしまったりするのです。

また取締役や代表者がどう決まるのか理解していないせいでクーデターを起こされることもあります。

知らないうちに労働基準法違反を犯し、その証拠をこっそり集められていることもあります。

まず全ての法の基礎となる憲法、そしてビジネスに関連する民法、会社法、労働基準法、下請法、消費者契約法あたりは最低限知っておくべきです。

それに法律を知っていれば、軽々しく署名や押印をしないので、いつの間にか保証人にされているということもなくなります。

それと別れた後に取り返せないマンションを愛人にプレゼントしてしまうようなこともしなくなります。

財務諸表が読めない社長は銀行のカモ

財務諸表を読めない経営者が意外と多いのですが、簿記2級程度の知識で良いのでつけておくべきです。

そもそも財務諸表が読めなければ、経営が上手くいっているのか分かりません。

分からないから正しい戦略が立てられませんし、実は資金繰りが危ないということにギリギリまで気づけません。

経理担当者が不正を働いていたとしても分かりません。

財務諸表が読めない社長というのは銀行からしたらカモのようなものです。

最低限、お金が動いたらそれが損益計算書と貸借対照表のどこに数字として入るのか把握できる程度にはなっていた方が良いでしょう。

分かりやすい会計の本がいくつも出ているので、読みやすいものを選べば良いと思います。

☑︎なぜCFO(最高財務責任者)のキャリア志向がM&Aを失敗させるのか?

経営者が読む必要のない本はビジネス書

せっかくなので読む必要のない本についても説明しておきます。

それはズバリ、ビジネス書です。

なぜビジネス書を読む必要がないかというと、中身がないからです。

「頭を使って一生懸命に仕事をしましょう」ということを何百ページも掛けて書いているだけです。

唯一参考になる点があるとしたら、中身のない話でも表現方法を変えれば300ページくらいの本は書けると理解できることくらいでしょう。

著者はブロガーとしての才能はあるかもしれません。

ビジネス書は専門書と比べると内容が簡単で読みやすいうえに、気軽に自分のレベルが上がったような気分を味わえるので、何冊も読んでしまう経営者もいます。

しかし、意識高い系のサラリーマンではないのですから、そういったものの無意味さに早く気づかなけれなりません。

どうしてもビジネス書が読みたいのであれば、昔からある古典とされるものを読めば良いと思います。

毎週のように目を引くようなタイトルのビジネス書が出ていますが、新しいことは何も書いておらず、昔からある本の言い回しを変えて書いているだけなのです。

書店で平積みになっている本に名著はないと思ったほうが良いです。古典とされるビジネス書の一章一節分が最新のビジネス書一冊分くらいの情報量という感覚です。

もちろん尊敬する経営者や同業者が書いた本を読むのは悪いことではありません。歴史に名を残すような経営者がどのように考えて判断をしてきたのか知るのは大いに役に立ちます。

しかし、『借金〇〇億から復活した〇〇な社長の非常識な経営法』のようなタイトルの本は役に立たない可能性が高いです。

たまたまその人がうまくいった方法でしかないからです。

そういった本を読むくらいなら純文学を読んだほうが良いです。

純文学を読むと他人の気持ちを推し量る能力が高まることがニュースクール大学の実験でも分かっています。

参考文献:David Comer Kidd and Emanuele Castano. (2013). Reading Literary Fiction Improves Theory of Mind.