価格競争をしない対策。比べる相手はライバルではなく「リファレンスポイント」

自社が価格競争に巻き込まれていたら破滅への道を歩んでいると思ったほうが良いです。

利益を圧迫すること以上に大きなデメリットがあります。

今回は価格競争がもたらすデメリットと、そこに巻き込まれないために意識すべき重要なポイントを解説します。

価格競争の一番のデメリットは利益を圧迫することではない

価格競争のメリットは消費者が安く買えるということくらいでしょう。(※1)

売手にとってはデメリットしかありません。

人件費やテナント代などの営業費用は粗利から支出するものですから、値下げで粗利率が下がれば経営を圧迫します。

そしてそれ以上に大きなデメリットが従業員のメンタルに悪影響を及ぼすということです。

※1マクロ視点で見ればデフレスパイラルにつながるので、最終的には買手にもデメリットとなります

客の質が下がると従業員がメンタルを病む

見落としがちですが価格競争、つまり安売りの一番のデメリットは従業員が疲弊することなのです。

なぜなら価格を下げると客の質も下がるからです。

商品を選ぶ基準が価格しかない人は卑しいタイプが多いです。

大したお金も払わないのに「こっちはお客様だぞ」という態度を取ります。

安い居酒屋や激安店の客層を見れば簡単に理解できると思います。

こういった属性の悪い客の相手ばかりしていると、従業員はメンタルを病んで仕事に対するモチベーションも下がり、それが強いては企業全体の収益悪化へとつながっていくのです。

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「店は客が育てる」

「店は客が育てる」といわれることもありますが、客層によって従業員の成長も変わります。

ですから客層は良いに越したことはありません。

そのためにも安売りをするべきではないのです。

激安店で客側が支払っているのは「商品そのものの金額」と「店員の最低限の対応に対する対価」だけです。

そこに必要以上に愛想よくしてもらったりイレギュラーなことをしてもらう料金は含まれていません。

しかし、価格でしか選ばない属性の客はそれが理解できないので、偉そうな態度を取ってしまうのです。

これが激安店の客層が悪い理由です。

このような客層を相手にしていても従業員の成長にはつながりません。

企業の業績や成長は従業員のメンタルの影響を強く受けます。従業員がやる気をもって活き活きと働いているかどうかで儲けは変わります。

ここを軽々しく考えている経営者も少なくないのですが、価格競争による従業員への悪影響は想像以上に大きなものと思ってください。

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価格競争をしないための対策

価格競争に巻き込まれないために、独自の商品を揃えたり、品質を高めたり、サポートを手厚くしたりと様々なことを行うと思います。

このような対策は当然必要ですし、有効といえるでしょう。

しかし、このときに意識すべきことがあります。

それは「リファレンスポイント」です。

「リファレンスポイント(参照点)」とは

消費者が価格を高いとか安いと思うとき、そこには比較対象があります。

1つの対象は競合店です。同一の商品であれば簡単に比較することができます。

ではその店でしか売っていないオリジナル商品だったらどうでしょうか?

実はこのときも消費者が比較を行っています。

何と比較しているかというと、頭の中に浮かんだ「これくらいの値段だろう」という予測です。

その予測を基準に判断しているのです。

このような基準のことを「リファレンスポイント(参照点)」といいます。

実際の金額がリファレンスポイントを下回れば安いと感じ、上回れば高いと感じるのです。

「リファレンスポイント」はイメージで決まる

ではこのリファレンスポイントはどのように決まるのでしょうか?

大きく影響するのはイメージです。

例えば、田舎の商店街の「〇〇洋品店」に100万円のバッグが売っていたら高いと感じるでしょう。

しかし、同じバッグが銀座中央通りのブティックで売っていれば安いと感じるのです。それどころか「在庫が残っててラッキー」と思う人さえいます。

この例は極端ですが些細なことがリファレンスポイントの設定に影響することが多いです。

ライバル店と差別化するために、店員の接客レベルを高めたとしても、古臭いデザインのくたびれた制服を着せていたら、安っぽく見られてしまうのです。

「他のセールスポイントがないから対応だけはよくしようとしているのだ」と思われるリスクさえあります。

価格を決定する際にはライバルと比べてどうか?ということに意識が向きがちです。

しかし、比較すべきは顧客の頭の中にある「リファレンスポイント」なのです。

安売り競争はやがて共倒れにつながりますから注意しましょう。