スティーブ・ジョブズが毎日同じ服を着ていたのは認知リソースの消費を抑える良い方法

私事ではありますが毎日同じ服を着ています。といっても洗濯していないということではなく、全く同じ服を複数持っているということです。靴もです。

30歳を超えたあたりから、ファッションに興味がなくなりはじめ、やがて服を買うことや、毎日着るものを選ぶことを面倒とさえ感じるようになってきました。

そして、アップルの元CEOである故スティーブ・ジョブズやFacebookのマーク・ザッカーバーグも毎日同じ服を着ているということを知り、自分も同じスタイルを取り入れることにしたのです。

といっても絶対に毎日同じ服でなければならないというほどこだわってはいませんが…。

ちなみにジョブズやザッカーバーグが同じ服を着る理由は、それを選ぶ時間や労力をビジネスに使いたいからだそうです。余計なことでリソースを消費しないよう徹底しているのです。

洋服を選ぶなんてそんな大した負担ではないでしょ?と思うかもしれません。しかし皆さんが思っている以上にちょっとした選択は脳のリソースを消費します。

認知負荷理論

24時間いつも仕事のことを考えているという経営者は洋服の選択に限らず、余計なことを判断する機会を減らしたほうが良いです。

なぜなら人間の脳はコンピューターと同じように一度に処理できる容量が決まっているからです。

同時に複数の作業や考え事をしようとするとどれかが抜け落ちやすくなります。

たとえハンズフリーであってもスマホで通話しながら運転をすると注意力が散漫になることからも分かると思います。

これを認知心理学などでは「認知負荷理論」といいます。

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リツイートするかしないかの判断だけでもパフォーマンスが落ちる

コーネル大学と北京大学の研究者が面白い実験を行っています。

まず、参加者にX(旧ツイッター)のようなアプリを通してメッセージを提示しました。

各メッセージを読んだ後に一方の参加者グループには「リポストする(リツイートのような機能)」か「次のメッセージに進む」かの選択ボタンを表示しました。

もう一方の参加者グループには「次のメッセージに進む」というボタンのみを表示しました。

全てのメッセージが表示された後でその内容についてのオンラインテストを受けさせました。

その結果、リポストの選択肢を表示された参加者グループのメンバーが誤答した割合は約2倍も高かったのです。

リポストしたことで「後でまた読める」という心理が働き覚えなくなったからではありません。

リポストすることによって認知の過負荷が起こり、理解したり覚えるという作業を上手く行えなかったからです。

この程度の作業であっても認知に負荷を生じさせてしまうのです。

なぜなら共有するかしないかの選択がある場合、それを決定すること自体が認知リソースを消費してしまうからです。

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毎日の洋服選びに限らず、判断することを減らす

この実験では別の恐ろしい結果も判明しています。

それは表示されたメッセージと無関係の内容のペーパーテストであっても、リポストした被験者は点数が低くなるということです。

その時点だけではなくその後のタスクにも悪影響を及ぼすことがあるのです。

つまりその日に着る服を選ぶだけでも認知リソースを消費し、それがビジネスの判断に悪影響を及ぼす可能性があるということです。

どの服を着るかに限らず、日常生活の中でどうでも良いことの判断に認知リソースを消費していないか見直したほうが良いでしょう。

もちろんファッションが好きで、毎日の洋服選びも楽しいと思っているのであれば、そのメリットのほうが大きいので変える必要はありません。

参考文献:Qi Wang, et al. (2016). Don’t retweet if you want to remember.