「女性の活躍を推進しよう」にうんざりの本人たち

女性の活躍を推進しようと言われ始めて久しいです。

クライアントの経営者から女性役員や管理職を増やしたいという声を聞く機会も増えました。

しかし、当の女性がその気になってくれないとボヤく経営者も多いです。

これはある意味で当然です。

「女性の活躍を推進しよう」という声に対し、当の女性たちは乗り気でないどころか、うんざりしているのです。

制度の問題だけではない

各種調査でも判明していることですが、役員や管理職になりたいという女性がそもそも少ないのです。

興味があっても、出世競争をして誰かと敵対するくらいなら、今のままで良いと考えてしまう女性もいます。

女性の活躍が推進されないのは、会社の制度の問題もありますが、女性の心理的な面での負担が問題となっていることもあります。

また、女性は競争でモチベーションが上がるタイプが少ないことも一因です。

行動経済学者のウリ・グニージー博士らの研究でも、男性は競うことでパフォーマンスが高まりますが、女性はそうならないことが分かっています。

社会の圧力が女性のやる気を削いでいる

なぜ女性は競争したがらないのでしょうか?

生まれ持った脳がそうなっているのでしょうか?

実は女性も女性だけの環境では競争でパフォーマンスが高まることがあります。

これが何を意味するかというと、社会の圧力が女性のやる気を削いでいるということです。

いまだに「女性が男性と同じ土俵で戦うなんて」という無意識に共有された空気があるのです。

競争に勝った女性は喜びだけではなく、負けた男性から嫌がらせされないだろうか、という不安も感じます。

大勢の前で褒められると嫉妬されるのではないかと心配になる女性もいます。

女性YouTuberがフェラーリに乗っているだけで批判されるのを見ると、特に日本はこのような傾向が強いのではないでしょうか?

言葉は悪いですが負け組男性の声さえ大きく響き、女性はそれを気にするのです。

制度を整えるだけの会社に女性はうんざりする

お茶汲みや掃除を女性だけにさせていた会社が、男性にもやらせるようにして、男女平等だと言い出すことがあります。

ここまで酷いケースは珍しいですが、人事制度を変えただけで、女性でも活躍できる体制を整えた気になる経営者は少なくありません。

しかし、それだけでは女性の活躍は推進できません。それどころか社会の圧力があるから形だけ整えたと感じてうんざりします。

女性に活躍してほしいと思っているなら社内の空気を変えなければなりません。

☑︎女性役員の比率を高めても、女性管理職は増えない。それどころか組織が崩壊する

天才外科医のエピソード

次のエピソードを読んでみてください。

ある父親が息子と一緒にドライブをしていたら事故に遭い、二人とも大ケガをして救急車で運ばれた。
幸運なことに天才外科医と呼ばれる医師が担当することになった。
その医師は運ばれてきた子供を見て驚きながらこう言った。
「この子は自分の息子です」

この話を読んですぐに外科医が女性(母親)と気づけたでしょうか?

父親が二人いるということか?と混乱した人もいるのではないでしょうか?

外科医は男性の仕事という無意識のジェンダーバイアスを持っていると、そうなってしまいます。

こういった無意識のジェンダーバイアスは女性に伝わります。ちょっとした言葉や態度に出るからです。

女性活躍を謳い、制度を整えても、意識までは変えていない会社が多いです。

そのため当の女性たちは「本気で活躍させる気などないくせに」とうんざりしてしまうのです。

女性に活躍してほしいのか?良い会社と思われたいだけのか?

組織は放っておくと片方の性別にとって有利な環境が出来てしまいます。

すると不利な方のパフォーマンスは落ちます。

無意識のバイアスは組織全体に悪影響を及ぼすのです。

本当に女性活躍を推進したいなら、経営者であるあなたの意識を根本的に変えなければなりません。

女性に活躍してほしいのか?女性を登用している良い会社と思われたいだけなのか?

もう一度よく考えてみましょう。

余談ですが、女性は洋服を選ぶときに同性から嫌悪感を持たれないだろうか?と気にしながら選ぶことがあります。同性からの目を気にするのです。

やる気のある女性を昇進させたとき、他の女性からの嫉妬や嫌がらせが発生しないよう、同性である女性たちが発する空気を変えさせることも大切です。

なぜベンチャーキャピタル(VC)の女性はパフォーマンスが低いのか?業界の問題

参考文献:Uri Gneezy, Muriel Niederle, Aldo Rustichini, Performance in Competitive Environments: Gender Differences, The Quarterly Journal of Economics, Volume 118, Issue 3, August 2003, Pages 1049–1074.