「0円」と「無料」の違い!消費者が好きなのはどっちか?

バナー広告などで無料キャンペーンを打つとき、「0円」と表示するか「無料」と表示するかで成果が変わる可能性があります。

消費者の持つ基本的な心理が影響するからです。

プロモーションの見せ方で顧客心理は変わる

例えば、客寄せのためにタダで何かをあげるプロモーションを行うとします。

2つ以上買ったら1つタダとか、来店しただけで商品をプレゼントなど、色々とやり方はあります。

お金を払わずに貰えるのですから消費者は喜んでくれるでしょう。

しかし、その喜びはプロモーションの見せ方によって変わります。それどころか、集客数そのものも変わります。

そのため、何も考えずにタダであげるだけでは少し損をしていることになります。

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バナー広告のクリック率も変わる

「0円」と「無料」はほとんど同じ意味です。

しかし「0円」と表示したほうが消費者は得した気分になります。

これはプギョン大学のジエン・クウらの実験でも判明しています。

この実験ではウェブサイトに掲示するバナーの文言を「0円」と「無料」の2パターン用意してその効果を比較するなどしています。

その結果、「0円」と書いたバナーの方がクリック率が高いという結果が出ています。そして、評価も好意的になります。

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なぜ「0円」表示のほうが良いのか?

なぜ「無料」よりも「0円」のほうが消費者からの評価が高くなるのでしょうか?

まず、消費者は表示の違いによって気持ちの向き先が変わります。

「無料」と表示されたとき、消費者は商品が「貰えること」に気持ちが向きます。

「0円」と表示されたときは、本来であれば支払うべきお金が「節約できること」に気持ちが向きます。

この違いが、いくら得したかという感じ方を変えるのです。

それを理解するためには「プロスペクト理論」が役立ちます。

プロスペクト理論とは人間の損失回避的な傾向を表す理論です。

ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンらによって提唱された、行動経済学の代表的な理論の一つです。

例えば「1万円もらう喜び」と「1万円を失うショック」を比べると、後者のほうがかなり大きくなるといわれています。

心理上は損失を実際よりも大きく見積もるのです。

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「1,000円支払わずに済んだ」とき心理的にはそれ以上の得を感じる

この理論を考慮して「無料」と「0円」を比べてみましょう。

例えば1,000円の商品が貰えるとします。

このとき「無料」表示のときは「1,000円の商品が貰えた」と考えます。心理的には1,000円の得です。

一方で「0円」表示のときは「1,000円支払わずに済んだ」と考えます。このとき心理的には1,000円以上の得となります。

なぜなら、1,000円支払うとき、気持ちの上では1,000円以上が失われると感じるからです。

それが1,500円なのか2,000円なのかは分かりませんが、貰える商品の金額以上の得をした気分になるのです。

これが「無料」よりも「0円」のほうが消費者の心に響く理由です。

マクドナルドはスマイル0円だけど…

そういえばマクドナルドも「スマイル無料」ではなく「スマイル0円」でした。

スマイルに値段はつけられませんので、どれくらい効果があるのかは不明ですが…

余談ですが、あなたがお店を経営している場合、店員にマニュアルで笑顔を強制するのはやめたほうが良いです。

強制的に笑顔を作らせた状態で働き続けると、メンタルに非常に悪影響が出ることが研究で判明しています。

やりがいをもって働ける環境を作れば、言われなくとも社員は笑顔になるものです。

参考文献:Jieun Koo, Kwanho Suk, Is $0 Better than Free? Consumer Response to “$0” versus “Free” Framing of a Free Promotion, Journal of Retailing, Volume 96, Issue 3, 2020.